SFは時代を映す鏡たりえるか/ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』感想

SFは時代を映す鏡たりえるか/ウィリアム・ギブスンニューロマンサー』感想
http://d.hatena.ne.jp/Rootport/20120325


世界を変えてしまう作品というものがある。どんなジャンルであれ、創作物は先行作品を踏み台にしながら発展していく。しかし時々、以前の作品から一段飛ばし、二段飛ばしで進んだ作品が登場する。すると、あらゆる作品がその作品と比較して語られるようになり、環境が一変してしまうのだ。

ニューロマンサー』は、そんなマイルストーン的な作品のひとつだ。この小説が無ければ、映画『マトリックス』も『攻殻機動隊』も誕生しなかった。ジャンルの壁を越えて、様々なクリエイターに影響を与えた大傑作といえよう。

「権力との対決」や「圧政からの解放」といったテーマは日本ではいまいちウケが悪い。が、世界的には人気を集めやすいテーマだという。たとえばハインラインの作品で人気投票をすると、日本ではぶっちぎりで『夏への扉』が選ばれるのに対し、諸外国(とくに欧米)では『月は無慈悲な夜の女王』が選ばれがちなのだとか。そういえば北京の海賊版DVDショップに唯一並んでいた日本のアニメは『ワンピース』だった。あの作品も「体制側」が敵役として登場している(「外部からの侵略者」を敵としていた『ドラゴンボール』とは対照的)。そういう「革命的な発想」が現在、世界的にウケがよく、それを真っ正面から扱った『V・フォー・ヴェンデッタ』がハッカーたちのバイブルになるのも当然――なのかもしれない。